金箔を食べられるって不思議だよなと思った話

科学・技術
ラビまる
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「金」は、食べても大丈夫な金属です。
その理由には、金特有の2つの性質が関係していました。


先日友人から、金箔入りの日本酒をいただいた。

ビンを少し振ると、スノードームのように金箔がキラキラと舞い、見た目にキレイなお酒だ。

正月用のお神酒の残りらしい。よく見ると金箔が舞っている。

ご存知のとおり、金箔とは「金を紙のように薄くのばしたもの」である。

お手軽にゴージャス感を演出できるとあって、工芸品や建具の仕上げにペタペタと貼られるなどして幅広く使われている。

一方で写真の日本酒のように金箔を食べちゃうこともあるわけだが、金を食べるのってよく考えるとちょっと不思議な感じがしませんか?

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食用の金箔ってホントにあの「金」なのか?

食用の金箔というものがあることを知ったのは、私が小学生くらいの頃だったと思う。
テレビか何かで見たのかな。

料理にパセリ感覚でふりかけたり、スイーツに添えてみたり。

抹茶アイス。きな粉と思いきや、金箔で装飾がしてある。
金箔ソフト。贅沢と悪ふざけの境界線である。

「金」というと、いわゆるゴールドインゴット、大富豪が持ってそうなあの金の延べ棒のことを想像しがちだ。

食用の金箔を初めて目の当たりにした幼少期の私は、金を食べるという発想にギョッとしてしまった。

当時の私はというと、

・金ってすごく高価なのに、あんなに気軽に使える訳はないだろう
・金属なんだから、人が食べたら大変なことになるんじゃないか

と至極まっとうな疑問を抱いた。

そして勝手に、
「食用の金箔は本物の金じゃないんだ。食紅みたいに、金色がついた無害な何かなんだ」
などと自己完結していたのだった。

しかし実際には、食用の金箔は正真正銘あの「金」なのである。

少年時代の私の疑念を晴らすには、金がもつ大きな2つの性質を知る必要がある。

元素としての「金」がもつ性質

性質その1:叩くとメチャクチャのびる

金は非常に柔らかい金属で、力を加えたときに壊れることなく柔軟に形を変える能力に長けている。(「展延性」といいます。)

金箔というものはこの性質を利用しており、たった1グラムの金を叩きまくってペラペラにのばすと、1メートル×1メートルの巨大な金箔シートを作れてしまう。

そのときの薄さはなんと約0.0001ミリほどだとか。
もはや薄すぎて、現実味を感じない数字である。

ごく少量の金から大量の金箔を生産できるから、いくら金が高価だとはいえ、金箔の原価としてはたいしたものではないということだ。

ちなみに日本酒に入ってるレベルの金箔なら本当に微量。
原価にしてせいぜい20~30円くらいなのかな。

性質その2:化学反応をおこさない

金は、(特殊な条件下を除けば)基本的に化学反応をおこさない。

鉄や銅などといった金属は、適当に置いておくといつのまにか空気に侵食されて変色したりボロボロになったりするけど、金にはそれがない。

私たちが金を体内に入れたとしても同様で、唾液、胃液、腸液などとさまざまな分泌液にさらされても、金は何ら化学変化することなく、やがてそのまま排泄されていく。

すなわち、金は私たちの体になんの影響も及ぼさないのである。

食べても毒にはならず、かといって栄養になることもない。

結局「金」が大好きな私たち

金箔は食べても栄養にこそならないが、たしかに見た目の美しさを演出し、食べる人をゴージャスな気分にさせてくれる。

「金=ゴージャス」と、簡単にいい気分にさせられている私たちもちょっと単純なのだが、それくらい金は長い人類史のなかで富の象徴としての地位を築いているのだ。

なぜ金が富の象徴となったのか。
実は前述した金の2つの性質がそのまま、人類が金に価値を見出してきた理由にもつながる。

金はピカピカしていて綺麗なだけではなく、柔らかいために装飾品としても加工しやすく、化学反応をおこさないので錆びて劣化することがない。

長い年月を経ても美しいまま、思うままの形で価値を保存できるうえに希少なのだから、まさに権力を誇示するのにぴったり、貨幣にするのにうってつけの金属というわけだ。

紙幣が金との引換券として価値を認めれていたのに対し、
金貨は古くからそれ自身が価値をもち、経済力の実体だった。

そんな人類皆から愛されている金だが、いま金箔となって私に食べられたからには、明日には無残に排泄されてトイレに流されていく。

そしてきっと下水処理場で汚泥みたいなものに混じって、人知れずどこかに埋め立てられて、化学変化もすることなく孤独に存在し続けるのだろう。

思えば日本酒のビンに浮いているこの金も、元々はどこか地中の 鉱脈みたいなところで化学変化もせずに途方もない年月を埋まって過ごしていて、たまたま最近人類に掘り出されてゴージャス扱いをされ、金箔になったのだ。

私が酒を飲みきったあとは、この金はまた下水管を通じて自然の中に還り、ふたたび人類の目に触れることになるのはまた途方もない年月が経ってからか。

あるいはとうとう二度と地上に現れずに、そのまま人類が滅亡してしまうかもしれない。

そうして私は金箔の一生(?)に思いを馳せながら、よくわからない壮大な時間の流れのロマンに浸っていたのだった。

ごちそうさまでした。

□ 食用の金箔は本物の金である。
・高価すぎて使えないのでは? ⇒ メチャクチャ薄くのばせるから大丈夫。
・食べても体に害はないの?  ⇒ 化学反応しないので害はない。益もない。
□ 美しいうえに錆びず加工もしやすい金は、古くから富の象徴だった

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