偏差値を見れば、「全体の中でどのくらいの位置にいるか」がわかります。
学校のテストではおなじみの指標ですが、これがどういう仕組みで算出されているのか、イメージできるでしょうか。
偏差値の仕組みを、だれでも分かるように簡単に解説します。
「偏差値(へんさち)」という指標は、だれもが一度は見聞きしたことがあると思う。
言うまでもなく受験生にとっては、常に興味関心の的となる数字である。
たとえ大人になって学業を離れたあとでも、ふと「顔面偏差値」などという身もふたもない表現に出会ったりして、その懐かしくも生々しい響きになんだかソワソワしたりする。
ところで、世間ではやたら偏差値偏差値というけれど、偏差値って結局どういう指標なのだろう。
「頑張ったおかげでテストの点数がかなり良くなったぞ!」
とそれなりに手ごたえのあった場合でも、偏差値を見てみると期待したほど伸びてはいなくて、ガッカリしてしまった経験のある人もいるかもしれない。
なにせ偏差値はテストの得点そのものと違って、一見どこから出てきたのかわからない数字だから、
「私の頑張りがちゃんと反映されていない!偏差値はデタラメだ!」
と思ってしまう人があってもおかしくはない。
しかし偏差値と絶交したあなたも、今一度ぜひ「偏差値がどういうものなのか」について考えてみよう。
偏差値とはどういう指標か
テストの得点だけで評価するときの弱点
そもそも、なんで偏差値を活用する必要があるのだろう。
それは、周囲の人間と成績を比較するにあたり、テストの得点だけを見るのでは分析が不十分だからである。
たとえばあなたが国語のテストと数学のテストでそれぞれ70点を取ったとする。
この点数が「良い」か「悪い」かを判断するとなれば、基本的には平均点との差を考えることが多いと思う。
国語の平均点が仮に85点なら、あなたの70点は「悪い」といえるし、数学の平均点が仮に50点なら、同じ70点でも今度は「良い」といえそうだ。
見落としがちなのは、そのテストにおける周囲の人間の点数のバラつき具合によっても評価が変わってくるということである。
平均点50点という状況が同じでも、
- できた人とできなかった人の差が激しく、0点から100点まで幅広く分布している平均点50点のテスト
- ほとんどの人が50点付近に固まっており、最高得点でも75点にとどまっている平均点50点のテスト
の2つがあれば、その中で70点を取った人の「優秀さ」は明らかに同じではない。
同じ得点でも ①全体の平均点、②得点のバラつき具合 が違えば価値が違う
という大原則を覚えておこう。
単純に得点を見比べるだけでは、その人が周りと比べてどのくらい良い成績かを判断できないのだ。
偏差値によってわかること
その点、偏差値は「全体の中でのその人の位置」を表すのに特化した指標である。
ものすごくザックリと言えば、
偏差値30:とても低い位置
偏差値40:低い位置
偏差値50:ちょうど真ん中の平均的な位置
偏差値60:高い位置
偏差値70:とても高い位置
とおおまかに表現できる。
平均点や周りの点数のバラつきがどうであっても、シンプルに偏差値を比較するだけで自分の位置を知れるのがいいところだ。
「前回のテストから得点が10点上がった」という情報だけでは何も判断できないが、「前回のテストから偏差値が10あがった」のであれば、確実に自分の実力が周りよりも伸びていると言えるわけである。
ちなみに、偏差値ごとの「希少さ」は一定ではなく、たとえば偏差値60の人の割合よりも、偏差値70の人の割合の方が圧倒的に少ない。
まして偏差値80などという数字にいたっては、めったにお目にかかれるものではない。
このことは、偏差値の分布をグラフで見てみるとよくわかる。
グラフでみる偏差値
下の図は、偏差値の分布を表したものである。
(横軸は偏差値、縦軸は発生頻度(≒その偏差値をとる人数)と考えてほしい。)
一番下の「T Scores」とあるのがいわゆる「偏差値」である。
偏差値70のラインを見てみると、「Cumulative%(累積百分率)」の欄に「97.7%」とある。
これはすなわち、
「全体のうち97.7%の人は偏差値70以下ですよ」
ということを意味している。
偏差値70以上の人は上位2.3%以内に入るエリートなんだということが、これで視覚的によくわかる。
逆に言えば、全体のおよそ95%の人は、偏差値30~70の間に収まるのだ。
そう聞いて感覚的にどうだろう。
「まあそんなものかな」という感じでしょうか。
あるいは、「思ったより偏差値って幅がないな」と思った人もいるかもしれない。
偏差値の算出原理
決まった形に変換するという考え方
偏差値をはじき出す仕組みをすごく簡単に言うならば、
実際の得点の分布を、「平均値50、標準偏差(ひょうじゅんへんさ)10の分布」に変換する
という計算処理を行っている。
「標準偏差ってなんですか?急に難しいことを言わないでください」
とのお怒りはごもっともだが、実はそれほど難しい話ではない。
標準偏差とは、「データのバラつき具合を示す値」だと認識してほしい。
同じ得点でも ①全体の平均点、②得点のバラつき具合 が違えば価値が違う
の原則のせいで成績の比較がしにくいので、
「だったら ①全体の平均点、②得点のバラつき具合 を一定の値に揃えてしまえばいいじゃん!」
という発想である。
上記の「偏差値の算出式」を用いれば、必ず「平均値50、標準偏差10の分布」という決まったフォーマットに変形されるため、簡単に成績を見比べることができるというわけだ。
偏差値を左右する要因
ここまでくれば、
「私の頑張りがちゃんと反映されていない!偏差値はデタラメだ!」
という感覚を生んでしまう原因についても冷静に理解することができる。
算出式を見てわかるとおり、実際は「私の頑張り」だけでなく、ほかの外部要因がいくつも絡み合って、偏差値が導き出されているのである。
とはいえ外部要因を自分でコントロールできるわけではないので、結局偏差値を上げるには「一生懸命努力して少しでも多くの点数をとるしかない」という結論は変わらないのだけれど。
ちなみに、かなり極端な条件を設定さえすれば、理論上は偏差値が100を超えたりマイナスになったりすることもある。
たとえば「学力テストであなた一人だけが満点をとっていて、あなた以外の受験者は全員得点が20~30点くらい」という状況とか。
そのくらい現実離れした事態でないと、偏差値100なんてそうそう現れないのである。
ということは、
「あの子カワイイ!顔面偏差値100あるっしょ!」
などという人は、実はその子の容姿を褒めるだけにとどまらず、
「あの子以外は全員ブサイク!」
とも間接的に主張していることになってしまうのである。
偏差値は「競争」の象徴
以上が、偏差値の仕組みについてでした。
偏差値というのは、とことん周囲との比較のうえに成り立っている指標だということを実感していただけただろうか。
思い返してみると、小学生だった頃は偏差値なんてものをあまり意識する機会はなかったのに、中学生にあがった頃からだろうか、いつのまにか偏差値というステータスを突きつけられるようになっていた。
たしかに小学生のテストでは「あなたがちゃんと理解しているか」が大事なのであって、全員がテストで80点とれていれば、それは「みんな素晴らしい!」でOKである。
しかし高校受験・大学受験となるとそうはいかない。
どれだけハイレベルな得点争いになろうが、定員が決まっている以上、合格するのはその中の上位一定数の人間だけなんだから。
中学校へ入ったとたんに露骨に偏差値という指標が登場するというのは、
「中学校へようこそ!ここから先は受験に始まる競争社会だぞ!」
という大人たちからのほろ苦いメッセージにほかならない。
ポジティブにとらえれば、こうして私たちは偏差値を胸に抱き、切磋琢磨することによって大きく成長してきたということである。
□偏差値は、データを変換して「平均値50・標準偏差10」の形に揃えたもの
(「標準偏差」:データのバラつき具合を表す指標)
□偏差値をみることで、その数値が全体の分布の中でどの位置にあるかがわかる
・偏差値50ならちょうど真ん中、30ならかなり低い、70ならかなり高い…など
□いろいろな外部要因によって偏差値が左右される
・全体の平均点で偏差値も変わる(要因:周囲のレベル、テストの難易度…)
・バラつき具合で偏差値も変わる(要因:テストの難易度、受験者数…)
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