【女房言葉】現代ではすっかり定着した、室町時代の女官たちによる造語の数々


「女房言葉(にょうぼうことば)」と呼ばれる日本語をご存じでしょうか?
(「御所ことば」「女中ことば」とも言います。)

女房言葉とは、室町時代の頃より宮中に仕えた女性(女房)たちが使っていた隠語のこと。
千年の都である京都を中心として、時代を下るにつれ徐々に一般世間にも使用例が広がっていきました。

そんなもの知らないぞ!という方も、おそらくご自分でも一度は使ったことがあるはず。

一般化した女房言葉の例
  • おひや
  • おかず
  • しゃもじ
  • おいしい

こういった語は今ではすっかり市民権を得ていますが、もともとは隠語・業界用語の一種だったんですね。

この記事では、

  • 女房言葉の発生と広がり
  • 女房言葉の種類と語構成
  • 「もじ」って何なのか問題

についてまとめています。

おばあちゃんが使う謎の方言が実は女房言葉由来だった、みたいなことも結構ありそうです。

目次

女房言葉とはなんなのか

女房言葉の「女房」というのは、貴族中心の平安時代にうまれた職業で、天皇家や上流貴族の住む宮廷に仕える女官のことです。
使用人の中でも比較的身分の高い、紫式部とか清少納言とかのイメージですね。

女房たちがお仕えする中でよく使っていた言葉だから、女房言葉。

彼女らの間でたくさんの業界用語が用いられるようになった経緯については想像するほかありませんが、仕事で多く扱う飲食物を呼ぶ際に “上品さ” を求めたのではないかと言われています。

特に南北朝時代からは、貴族階級と庶民との境界が以前よりゆるやかになり、両者の文化的な交流が進んでいく背景もあります。
そんな中で女房としては、高貴な方々のための食事を庶民と同じように呼ぶのには抵抗があったのでしょう。

直接言い表すのはちょっとはしたないので、オブラートに包んでふんわり表現する。
(今私たちが「便所」を「お手洗い」を言い換えるのとも近い感覚なのかもしれません)

そんな感じで女房言葉は、宮中の日々の暮らしとともにじわじわと形成されていきました。

使用例の登場

女房言葉が宮中で日常的に用いられていた事実が記録として登場する最古の史料は、およそ600年前、室町時代のものです。

内裏仙洞ニハ、一切ノ食物ニ異名ヲ付テ被召事也。

一向不存知者、当座ニ迷惑スベキ者哉。

飯ヲ供御、酒ハ九献、餅ハカチン、味噌ヲハムシ、塩ハシロモノ、豆腐ハカベ、索麪ハホソモノ、松蕈ハマツ、鯉ハコモジ、…

恵命院権僧正宣守『海人藻芥(あまのもくず)』(1420年)

上記は宣守というお坊さんが著した書物で、おおむねこんなことを言っています。

宣守

内裏とか仙洞御所だと、食べ物はみんな別名で呼ばれてるんだよね。
全然知らない人からしたら最初はとまどっちゃうんじゃないかなあ。

また彼はその実例も挙げてくれています。

  • 飯は「供御(くご)」
  • 酒は「九献(くこん)」
  • 餅は「かちん」
  • 味噌は「むし」
  • 塩は「しろもの」
  • 豆腐は「かべ」
  • そうめんは「ほそもの」
  • 松茸は「まつ」
  • 鯉は「こもじ」

…と、これらがいわゆる女房言葉です。

別名がつけられている背景にはそれぞれ由来があるわけですが、言葉によって命名規則は結構バラバラです。
対象の形状にもとづいていたり性質を表していたり、そのほかに何かいわれがあったり。

たとえば酒を「九献(くこん)」と呼ぶのは、3つの盃で3献ずつ酒を酌み交わす「三々九度」というお作法からきたもの。
味噌の「むし」はおそらく、大豆を蒸して作るからでしょう。
そうめんの「ほそもの」は細いから、松茸の「まつ」は略して呼んだもので、この辺はかなり単純です。

しかし宣守が指摘したように、事前知識がない状態で急に言われても、これだけでは何のことだかさっぱりですよね。

その分からなさが、閉鎖的な宮中において女官たちの結束とプロ意識を高めてくれる役割もあったのかもしれません。

世間一般への普及

当初は宮中においてのみ通じるマイナー言語であった女房言葉ですが、その後は徐々に使用階級が広がっていき、江戸時代にはすっかり庶民階級にもその存在が知れていたようです。

江戸後期の作家・式亭三馬(しきていさんば:1776-1822)の滑稽本『浮世風呂』の中には、町娘たちのこんな会話が出てきます。

おさめ

オホホ、「おしゃもじ」とは「杓子(しゃくし)」のことでございますわよ。

おむす

そうなんですか!私は「おしゃべり」のことかと思ってました。
だって寿司は「すもじ」、魚は「さもじ」って言ってたでしょ。
おしゃべりは「おしゃもじ」になりそうじゃないですか。

おさめ

いやあね、あなたもいつかお屋敷へお上がりになるとお分かりになりますわよ、オホホホ…

これは武家屋敷での奉公を経験した「おさめ」と、未経験者の「おむす」とのやり取りです。
どちらも庶民階級の町娘なのだけど、武家で働いてきたら途端に上流のような話し方になってマウントを取ってくる、という面白コントになっています。

滑稽本はいわば大衆エンタメ小説のようなものですから、このころには町人をはじめ各地方の庶民にも女房言葉の影響が伝播していたであろうことがうかがえますね。

おさめのような武家屋敷に仕える女中たちの言い回しは「お屋敷ことば」と呼ばれますが、これはかつての宮廷の「女房言葉」がそのまま武家へと伝わったもので、ルーツとしては同じもの。
それがさらに町方出身の奉公人などを通じて、下町文化にも伝わっていったわけです。

ここまでくると隠語というよりも、教養ある女性のたしなみ、上品な言葉遣いとしての役割がメインだったのでしょう。

内裏 → 将軍家 → 武家 → 町方 → そして私たちへ。
女房言葉が現代にまで受け継がれている背景には、いくつもの時代と階級を少しずつ越えていく、長く険しい道のりがあったんですね。

女房言葉の分類と具体例

さて、ここからは女房言葉にどんな単語があるのか、具体例をもっと見ていきましょう。

実は女房言葉の語構成には、頻出の語構成パターンというものがいくつか存在します。
中でも特にあるあるなのは、大きく分けて次の2種類。

その1:「お」+「〇〇」 の構成

その2:「〇〇」+「もじ」 の構成

すでに見てきた例の中にも、いくつか当てはまるものがありましたね。
これらの形だけでも、女房言葉のかなりの割合を占めています。

上記に加えて、
畳語(同じ語を反復する形)
省略語(元の語の一部を省略した形)
などもよく出てくるようです。

各パターンごとに、実例をざっとご紹介していきます。

1. 接頭辞「お」の形

まずは女房言葉の代表的な例
「お」+「〇〇」 の構成です。

接頭辞「お」がつく女房言葉の例
  • 「おでん」 ・・・ お + 田楽(でんがく)
  • 「おこわ」 ・・・ お + 強飯(こわめし)
  • 「おかか」 ・・・ お + 鰹(かつお)
  • 「おいしい」・・・ お + 美しい(いしい)
  • 「おなら」 ・・・ お + 鳴らし(ならし)

このあたりは今や普通語としてすっかり定着していますね。
「お」を頭につけることで、丁寧で柔らかい印象になる感じがします。

ほかにも、

  • 「おむすび」:にぎり飯
  • 「おじや」:雑炊
  • 「おさつ」:さつまいも
  • 「おむら」:いわし
  • 「おぬめり」:なまこ
  • 「おつむ」:頭
  • 「おなか」:腹
  • 「おねめし」:ねまき
  • 「おみかけ」:浴衣

などなど、様々な例があります。

また「お」+「〇〇」の形から派生して、

  • 「おみ」+「〇〇」のパターン
    (おみあし:足 、おみおつけ:味噌汁、など)
  • 「お」+「〇〇」+「さん」のパターン
    (おすきさん:好物、おおどろきさん:驚き、など)

といった応用のバリエーションも見られます。

2. 接尾辞「もじ」の形

そしてもう一つ特徴的なのがこの形。
「〇〇」+「もじ」 の構成です。

接尾辞「もじ」がつく女房言葉の例
  • 「しゃもじ」・・・ 杓子(しゃくし)+ もじ
  • 「お目もじ」・・・ お目にかかる + もじ
  • 「ひもじい」・・・ ひだるい + もじ
  • 「はもじい」・・・ はずかしい + もじ
  • 「かもじ」 ・・・ 髪(かみ)+ もじ

ほかにも順に挙げていけば、

  • 「あもじ」:姉
  • 「いもじ」:いか
  • 「うもじ」:内方(妻)
  • 「えもじ」:えび
  • 「おもじ」:帯

のように、ありそうなものは大体あるといった感じ。

単純な語構造なので汎用性は高いですが意味の重複もあるようで、たとえば「たもじ」はタコの意味だったりタバコの意味だったり、どちらもあるところです。

ちなみにここで使われている「もじ」とは「文字」のこと。
このような構成の女房言葉は特に、「文字詞(もじことば)」とも呼ばれています。

「もじ」が後ろにつくことで、遠回しにやんわりと伝える婉曲表現としての機能があるのです。

まあなんとなく、もじもじしていて可愛らしい雰囲気はありますよね。

3. その他の形

以上、女房言葉の2大定番パターンでした。

また「お」と「もじ」ほどではありませんが、ほかにもこんな語構成がよく出てきます。

畳語の形

「畳語(じょうご)」とは、同じ語を反復する形のこと。

  • 「いしいし」:団子
  • 「するする」:するめ
  • 「かずかず」:数の子
  • 「いりいり」」煎り豆

など反復のみの形に加え、

  • 「おさびさび」:さびしい
  • 「おすやすや」:熟睡
  • 「おはやばや」:早くに

のように「お」+「畳語」のハイブリット型も多く見られます。

ちなみに団子の「いしいし」は、団子がとにかく美味しいのが由来です。
「おいしい!おいしい!」「いしいし!」
という単純なネーミング。可愛いですね。

省略語の形

もっとシンプルに、元の語の一部を略しただけのパターンもあります。

  • 「たけ」:たけのこ
  • 「わら」:わらび
  • 「まつ」:松茸
  • 「にゃく」:こんにゃく
  • 「ごん」:ごぼう

などなど。

ごぼうの「ごん」は、ごぼうがなまった「ごんぼう」の略だとされています。
そのまま「ごぼ」だとなんか溺れているみたいで嫌ですが、「ごん」ならキュートで語感もいい感じです。

省略形の女房言葉には食材名が多いような印象です。
調理場での迅速なコミュニケーションに有利だからでしょうか。

女房言葉を客観視する

自然言語に変化はつきものですが、女房言葉のように特定のコミュニティで人為的に変化させた語彙がここまで後世に定着した事例も珍しいでしょう。

1990年代に女子高生が生み出した「チョベリグ(超 very good)」なんかは数年で廃れてしまったというのに。
よく考えたらあれも、女房言葉の語構造と本質的にさほど違いません。

女房言葉の「およしよしさん」など、今ではたいそう上品で趣深い大和言葉に聞こえますが、「良い」というだけのことを「よしよし」と反復して、「お」までつけて、さらに「さん」までつけて、結構むちゃくちゃな改造をしています。

ギャル語を言葉の乱れだと揶揄する現代人が、もし過去に転生することになったら…
同じように、生まれて間もない女房言葉にも批判の矛先を向けるのかもしれませんね。

女房言葉を批判した文書

実はすでに江戸時代の史料で、女房言葉に対して否定的な見方を示した批判書が残っています。
田安 宗武(たやす むねたけ:1716-1771)『草むすび』という書物です。

宗武は江戸幕府八代将軍・徳川吉宗の三男で、寛政の改革で有名な老中・松平定信の実父にあたる人物でした。
めちゃくちゃ良い家系の育ちなので、普段から女房たちを身近に抱えていたわけですね。

彼の女房言葉への見解は、たとえばこんな感じです。

宗武

女房たちは飯を「供御」とか言うけど、あれは本来天皇様へ貢納する飲食物のことであって、その辺の凡人の食事にまで使うのは違うでしょ。
色んな飲食物がある中で飯だけ「供御」なのもよくわからんし。

「おひや」というのも、身分の低い連中が「冷や水」と呼んでるのを参考にしたんでしょ?「ごん」とかも、卑しい田舎者が「ごんぼう」とか言ってるのが元なんだろうし。そんな低俗な言葉を使ってるなんて嘆かわしいよね。

松茸が「まつ」なのもひどいわ。キノコなんだから重要なのは「茸」のほうじゃない?栗の実を「くり」と言うように、松の実こそ「まつ」であるべきでしょ。

とこんな調子で、本書では次々と女房言葉の例を取り上げて、それらに片っ端から噛みついては一刀両断していく様が綴られています。

『草むすび』では一貫して、女房言葉をくずれた日本語として軽蔑するスタンスを示します。
しかし、そこには宗武自身の「上流階級こそがすべて」「昔ながらの古語こそが尊い」という個人的な思想が大いに反映されているので、まあこっちはこっちでツッコミどころのある書物といえるかもしれません。

言葉の変化に対する良し悪しの批評というのは、いつの世にもあるものなんですね。

「もじ」って結局なんなんだ

ところで、田安宗武ほど強い階級意識や尚古思想をもっていないにしても、やっぱり接尾辞「もじ」だけは理解に苦しむという人は多いのではないでしょうか。
「文字」をつけたら柔らかい表現になるってどういうことなんでしょう。
どんな思考回路でそうなったのか、まったくもって意味不明です。

実は女房言葉において「もじ」が使われるようになった由来というのは未だよくわかっていないのです。

ただ前述の『草むすび』の中で、その点についても宗武なりの見解が示されています。

宗武

「文字」をつけて呼ぶ言葉も多いよね。
わかんないけどこれは延政門院が幼少期に恋しく思う気持ちを隠してお詠みになったお歌を見て、なんか勘違いした人が「隠して言うなら”文字”で」とか考えちゃったんじゃないの。

ここで彼が言っているのは、吉田兼好 (1283-1350)の随筆『徒然草(つれづれぐさ)』に出てくるエピソードで、後嵯峨上皇の第二皇女である幼い延政門院が父君に歌を詠んで送った場面のお話です。

延政門院いときなくおはしましける時、院へ参る人に御言づてとて申させ給ひける御歌、

ふたつもじ 牛の角もじ すぐなもじ ゆがみもじとぞ 君はおぼゆる

こひしくおもひまゐらせ給ふとなり。

吉田兼好『徒然草』第六十二段

ひらがな文字を習って間もないであろう延政門院が詠んだ「ふたつもじ~君はおぼゆる」の歌は、暗号メッセージでした。

  • ふたつのもじ:「こ」
  • 牛の角みたいなもじ:「ひ」
  • まっすぐなもじ:「し」
  • ゆがんだもじ:「く」

これらの文字が意味するように、私は父上を「こひしく(恋しく)」思っておりますよ、というウィットに富んだ歌を送ったわけですね。
文字をそのまま形として捉える、子供ならではの視点が微笑ましい謎解きです。

先の宗武の見解はつまり、このエピソードを知った女房の誰かが、
「なるほど何かを隠して言いたいときは “文字” をつければいいのね!」
と安直に考えたのではないか、という説です。

もちろん宗武はこれに対してもしっかり攻撃を加えることを欠かしません。

宗武

あのお歌ではその文字の形のことを「ふたつもじ」「牛の角もじ」と表しているのに、女房ときたら単語の頭にただ「もじ」をつけて鯉を「こもじ」とか鮒を「ふもじ」とか、いやそれもう全然わけわかんないことしてるじゃん。

まあこれも女房言葉がすでに浸透しきった江戸時代の推測ですから、由来として正確かどうかは定かではありません。
実際は延政門院の歌なんてまったく関係ない発祥だった!みたいな可能性も当然あるわけです。

別の可能性も想像してみましょう。

たとえば、少し特殊な命名規則の文字詞で、「ひともじ」「ふたもじ」というのがあります。

「ひともじ」は、野菜のねぎのこと。
昔は「葱(き)」と一文字で呼んだので「ひともじ」。

「ふたもじ」は、野菜のにらのこと。
「韮(にら)」と二文字なので「ふたもじ」です。

こういう「文字」の使い方ならまあ分かりますよね。
「ちょっと、一文字のアレもってきて!」
とか、隠語としてわりと自然に出てきそうじゃないですか。

そこから「ひともじ」「ふたもじ」が先導する形で、「〇〇もじ」のシリーズがやや強引に増やされていった…、とか。
こちらのシナリオもそれなりに納得感がある気がしますが、どうでしょうかね。

本当のところは誰にもわかりません。
何しろ600年以上も前のことですからね。

わからないのも面白い

というわけで、今回は女房言葉の発生と変異について、またその語構成による分類などについても見てきました。

今回のまとめ
  • 女房言葉は宮中に仕えた女官たちの上品な隠語として生まれた
  • 時代を下るにつれ将軍家、武家、町方へと広まり一般語にもなった
  • 接頭辞「お」、接尾辞「もじ」の語構成の例が多い
  • 「もじ」の由来は結局よくわからない

これほどモジモジ言っておきながら、「もじ」の出どころが結局よくわからないというのも、ややもどかしい感じもします。

しかし、そのわからなさこそが、言葉の魅力のひとつでもあると思うのです。

文字詞のみならず、多種多様な女房言葉の中には由来がはっきりしないもの、憶測の域を出ないものというのはたくさん存在します。
そしてそれは女房言葉以外の日本語、日本語以外のどの自然言語をとってみても同じことですね。

言葉というのはその時代の担い手がその時々の雰囲気でなんとなく運用してきた継ぎ足し式の秘伝のタレであって、元来確固たる実態のない流動的なものといえます。
私たちがなんだかよくわからないまま言葉を話しているように、過去の誰もがやはり、当時の言葉の全体像をわかっていません。

「よくわからないこと」は、それ自体が言葉の本質でもあるんですね。

昨今のSNSカルチャーの中でも、なんだかよくわからないうちにスラング的な新語が次々と登場しています。
ちょっと前には「〇〇たん」のシリーズがありましたよね。

  • 「つらたん」・・・ つらい + たん
  • 「やばたん」・・・ やばい + たん
  • 「こわたん」・・・ こわい + たん

また、こんなシリーズもありました。

  • 「わかりみ」・・・ わかる + み
  • 「おいしみ」・・・ おいしい + み

いずれの若者言葉も、「〇〇もじ」と同じ語構成を採用していることに気づきます。

もし「〇〇たん」の語彙が今後600年後にまで残ったら、これもまた色々な憶測を生んでしまうかもしれません。

「たん」は「嘆息」のことで、後ろにつけてしみじみした感情を表現した、みたいな説とか、
「たん」は「譚」のことで、つらい物語やこわい話を表したのが由来、みたいな説とか。

本当は「とりま “たん” ってつけとけば可愛くね?きゃわたんー!」くらいの軽いノリで運用されていたとしても、それもいずれは言葉の歴史の波に溶けて「よくわからないこと」となっていくのです。

言葉ってあいまいで、それもやっぱり面白いですね。

文字詞も、実は昔のイケイケ女房が「文字って可愛くね?」くらいのノリで量産してたんじゃないか、とか想像してみると少しなごみます。


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女房言葉(御所ことば)について、女官文化が残る尼門跡寺院へのインタビューや歴史的な文献資料をもとに丁寧に分析した研究書。巻末の語彙のリストも網羅的かつ検索性があって見やすい。とても良い本。

この記事を書いた人

色んな事に興味が尽きない "興味の窓" の管理人です。
大学時代の専攻は心理学。公務員を経て、現在はフリーのデザイナー。
読んでくれた方の興味が広がるきっかけとなるようなコラムを発信してみたいと思い、ちびちびとサイトを更新しています。

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