パッションフルーツの「パッション」、由来ってなんだろう

生物・自然
ラビまる
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パッションフルーツは、香り高い南国のフルーツ。
その名前には、実はあのキリスト教が密接に関係していました。


華やかな独特の香りが特徴的なパッションフルーツ

もともとの原産はアメリカ南部らしいが、現在は南米諸国を中心に広く栽培されている。
生産流通の本場はというと、やはりフルーツ大国のブラジルだ。

スーパーでは果実そのものを目にすることはあまりないが、ジュースだったりシロップだったり、パッションフルーツの加工品はいろいろと販売されている。

お菓子をつくる方は、パッションフルーツシロップにも馴染みがあるかもしれませんね。

個人的なオススメは、「PASSOA」というリキュール。
フルーティーで香りもよく、炭酸で割って飲むほか、ヨーグルトと混ぜてスムージー風にしてもおいしい。

「パッション」ってなんなのか

ところで、パッションフルーツの「パッション」とはどういう意味だろう。

英語でパッション(passion)というと、「情熱」とか「激情」とか、そういった訳をすることが多い。

うーん、パッションフルーツは直訳で「情熱果物」か。
たしかに南国って陽気で情熱的な感じがするから、 ブラジルのイメージにぴったりだな。

などと、筆者はなんとなくそんな認識でいたのだが、実はそうではない。

パッションフルーツの「パッション」とは、「キリストの受難」を意味しているのある。

「え?急になんですか?」

と面くらう人もいるかと思うが、たしかに英語の”passion”には、そういう語義がある。

<passion>
1 不可算名詞[しばしば複数形で](異性に対する)情欲、色情、恋情
2 a 不可算名詞 熱情、情熱、激情
  b [複数形で](理性と対比して)感情、情感
3 [単数形で]
  a (…に対する)熱愛、熱中、熱狂
  b 熱愛の対象
4 [a passion]かんしゃく、激昂、激怒

5 [the P~] 【キリスト教】 キリストの苦難

Weblio辞書 – passion – より

そもそも”passion”という単語は、「苦しむ」「耐え忍ぶ」を意味するラテン語”patior”を語源としているらしい。

そう考えると、むしろ「情熱」よりも「苦難」のほうが原義に近いといえそうだ。

パッションフラワーを観察してみる

「パッション」がキリストの受難を意味することはわかったが、ではパッションフルーツとどのような関係があるのか。

実は、パッションフルーツは「パッションフラワー」という植物の果実なのだが、このパッションフラワーの名前の由来にキリストが関係している。

パッションフラワーの花。非常に特徴的な見た目をしている。

この花を南米で初めて目撃した、キリスト教イエズス会の宣教師の男は、

「この花はキリストの受難を象徴している!」

と思ったそうである。

どこをどう見たらそうなるのか。
いわく、おおむね次のとおりである。

パッションフラワーとキリストの受難との類似ポイント
  • 大きく突き出ためしべ(紫の部分)は、十字架を背負うキリストの姿の象徴
  • その後ろのおしべ(黄緑の部分)は、キリストが受けた傷の象徴
  • 放射状に伸びた花冠は、キリストがかぶせられた茨(いばら)の冠の象徴
  • 計10枚の花弁と萼(がく)は、忠実な10人の使徒の象徴
    (※12使徒のうち、裏切りのイメージがあるユダとペトロは除かれています)

ちょっと無理やりな感じはあるが、ともかく宣教師たちはこの花を”passion flower(受難の花)”と呼ぶようになった。
(南米に自生する植物を「キリストの象徴」とするのが、布教活動に好都合だったのかもしれない。)

これが由来となり、今でもパッションフラワー、ひいてはパッションフルーツの名が使われているのである。

ちなみに、一方で日本人はこの花を「トケイソウ」と名づけていた。

たしかにオシャレな部屋の壁掛け時計にも見えるし、こっちのほうが納得感はありますね。

正面から見たパッションフラワー(トケイソウ)
<出典:Wikipedia(by Kuribo)>

キリストの受難とはどんなものだったか

そもそも、”passion”が意味する「キリストの受難」とは何だろう。

一言で表せば、キリストが裁判・処刑される過程で受けた精神的・肉体的な苦痛のことである。

なぜキリストが処刑されることになったのか。
きっと厳密に突き詰めるといろいろと解釈があるのだろうが、ざっくり大まかな流れはこんな感じ。

1. イエス・キリストの教えが民衆に広まる
2. ユダヤ教をベースに国を治める上層部がこれを恐れて、キリストを告発する
3. キリストは民衆を惑わせたとの罪で死罪となり、捕らえられる
  ⇒ いばらの冠をかぶせられ、拷問をうける
  ⇒ むちゃくちゃ重い十字架を背負って処刑場まで歩かされる
  ⇒ 手足に釘を打ち込まれて十字架に固定され、死ぬまで放置

かなり残酷な最期である。

こうしたキリストの死によって全人類の罪が永遠に許されたのです、というエピソードだ。

関連して、メル・ギブソン監督の映画で「パッション」という作品がある。

タイトルの「パッション」とはまさに「パッションフルーツ」と同じ”the Passion(=キリストの受難)”のことで、キリストが死に至るまでを克明に描いた作品である。

公開当初はかなりの賛否両論を巻き起こした話題作だった。

映画『パッション』

人間というのは、前提知識や価値観によってモノの見方が変わる。

映画を見て、キリストが受けた苦難を知ってから、ふとパッションフラワー(トケイソウ)の花を見てみよう。

もしかしたら私たちも、かつての宣教師のように「パッション」をその花の中に感じるようになるかもしれない。

パッションフルーツの「パッション」は、「キリストの受難」のこと
・パッションフラワーの特徴的な形が、キリストの受難を象徴していると考えられた
・日本ではパッションフラワーを「トケイソウ」と名づけていた

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