【カリギュラ効果】やるなと言われたらやりたくなっちゃうメカニズム【心理的リアクタンス理論】

カリギュラ効果とは? 心理学
ラビまる
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禁止されると余計にやりたくなってしまうことを俗に「カリギュラ効果」といいます。
これには「心理的リアクタンス」といって、自由でありたいと求める心の働きが関係しているのです。

この記事の内容
  • カリギュラ効果とはどんな現象か
  • そのメカニズム(心理的リアクタンス)とはどのようなものか
  • カリギュラ効果に振り回されないためにはどうすればよいか

私たちの日常生活において、何か行動をを禁止されるような場面は多い。

「電車内では通話禁止」とか、「専用ブース以外では禁煙」とか。

こうした文言は、ともすると私たちの欲求を逆に刺激してしまうチカラを秘めている。

たとえば、下のようなボタンがあるとする。

注意:このボタンは押さないでください。

こんな感じでついつい押しちゃう心理作用について、以下で解説していきます。

わざわざ押すなと念押ししていることで、

「押したら何があるんだろう…押してみたい…」

と逆に興味をそそられてしまったりする。

このように、何かを禁止することはそれ自体がしばしば私たちの心理に影響を及ぼすのである。

身近な心理現象「カリギュラ効果」

カリギュラ効果とは

禁止されるとかえってやってみたくなる心理現象のことを、俗に「カリギュラ効果」という。

「カリギュラ(Caligula)」というのは、かつてアメリカで上映禁止となった映画のこと。

「過激すぎて上映禁止になった映画があるらしいぞ」

と話題になったことで逆に注目を集めてヒットしたことから、今ではそうした心理現象を指す言葉として使われるようになった。

カリギュラ(Caligula)

古代ローマの第3代皇帝となった実在の人物カリギュラ(西暦12-41)を主人公とした、当時の政治情勢を描いた壮大な歴史映画。
…と思いきや、その内容はただの歴史風コスプレアダルトムービーだったので批判が殺到し、一部上映禁止となった。

映画『カリギュラ』より

身の回りの具体例

やっちゃいけないことをやりたくなっちゃうのは、もはや人間の宿命ともいえる衝動で、日常においてもたくさんの事例が思い当たる。

たとえば、こんな場面。

  • 医師やトレーナーから揚げ物を禁止される
    ⇒ こっそり食べちゃう
  • 「絶対誰にも言わないでね」と親友にクギをさされる
    ⇒ 言っちゃう
  • 押すなよ!絶対に押すなよ!
    ⇒ 押しちゃう(ダチョウ倶楽部)
  • 鶴「絶対に中をのぞかないでくださいね…。」
    ⇒ のぞいちゃう (童話『鶴の恩返し』)
  • 18歳未満のお客様は立ち入り禁止です
    ⇒ 中学生なのにちょっとだけ入っちゃう
     (レンタルDVDショップのあのエリア)

「ダメなのについついやっちゃうんだよなぁ」

と時に自己嫌悪にも陥ることもあるが、これらはすべてカリギュラ効果のしわざだったのである。

心理的リアクタンス理論

カリギュラ効果はなぜ生じるか

では、カリギュラ効果が生じるメカニズムはどのようなものなのか。

一般にカリギュラ効果として知られる現象は、心理学の世界でいう「心理的リアクタンス」によって説明される。

心理的リアクタンス(Psychological Reactance)

自分の自由が制限される脅威に対して反発し、本来の自由を回復作用とする心の働きのこと。

心理的リアクタンスの理論を提唱したのは、アメリカの心理学者ジャック・ブレーム(1928-2009)だった。

彼の説明によれば、私たち人間は「自分の行動を自分で決めたい」という生得的な欲求をもっている。

しかし、外部の何者かによってその自由が脅かされると、

「自由を侵害されるのはいやだ!自分の好きにさせてくれ!」

とそれに反発するような心理作用が働く。

これにより、「見るな」といわれれば反発して見たくなるし、禁止された行為は反発してぜひともやってやりたくなるのである。

心理的リアクタンスの3要素

ブレームは、心理的リアクタンスが生じるのには主に3つの要素が関わっていると考えた。

すなわち、

①その人にとっての、制限される行動の重要性

②制限される行動の総量

③行動を制限する「脅威」の程度

という3要素である。

①その人にとっての、制限される行動の重要性

まず、その人にとって重要な行動が禁止されたときほど、心理的リアクタンスは大きくなる。

たとえば「甘いものを食べること」を禁止されたとする。

この場合、普段から甘いものはあまり好まない人よりも、もちろんスイーツ大好きな人のほうが「食べたい!」という欲求は強く生じることになる。

②制限される行動の総量

また、より多くの行動が制限されたときほど、心理的リアクタンスは大きくなる。

  • 甘いものは1日1個までしか食べるの禁止
  • 甘いものは今後一切食べるの禁止

の2パターンがあったとき、後者のほうが制限される量が多いので、こちらのほうが「食べたい!」という欲求も強くなるわけだ。

③行動を制限する「脅威」の程度

そしてなかなか面白いのが、「脅威」という観点である。

たとえば、

「甘いものは食べちゃダメだからね」

と単に友人に念押しされるよりも、

「今後甘いものを口にした市民は、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科します」

という強い公権力によって制限されたほうが、その脅威は大きくなり、また心理的リアクタンスも大きくなるという。

脅威とは、言い換えれば「自由を押さえつけようとする圧力」といったところだろうか。

カリギュラ効果をコントロールしよう

「禁止」を利用した企業の戦略

このような心理的リアクタンスに起因する私たちの欲求エネルギーを巧みに利用して、世の中にはあえて禁止することによる商業戦略があふれている。

「ここから先は極秘情報なので、確実に痩せたい方以外は見ないでください!」

みたいな広告、一度は見たことありますよね。

特に筆者の印象に残っているものとして、某化粧品メーカーのテレビCMがある。

それは、最近はあまり見かけないが、

大変申し訳ございませんが、「ドモホルン〇ンクル(商品名)」は初めてのお客様にはお売りできません。

というナレーションで始まるものだった。

「なんでそんなこというの!私にも売ってよ!」

という気分についついなってしまう、カリギュラ効果をうまく使ったCMである。

(その後は、「まずはサンプルを送付し、納得されたお客様だけにご注文いただきます」と続く。)

カリギュラ効果に振り回されないために

私たちが何かを禁止する立場、あるいは禁止される立場のどちらに立つしても、カリギュラ効果の存在は大きな影響力をもっている。

もしあなたが他人の行動をどうしても制限したいとき、へたに禁止してしまうとかえってその行動を喚起することになりかねない。

また、あなたが大してとりたくない行動でも、他人にあえて禁止されることで、まんまとその行動を実行されられてしまうかもしれない。

このようにカリギュラ効果に振り回されて不本意な結果を招かないためには、

「その行動をしたらどうなるのか」という結果に注目を向ける

ということが重要になる。

なぜなら人間には、自分にとっての利益と不利益をふまえて行動する合理性があるからである。

たとえば、「絶対に中をのぞかないでくださいね…。」でおなじみの『鶴の恩返し』の鶴も、「のぞいたらどうなるか」についてもっと語っておくべきだった。

「もし中をのぞいたら私はもう二度とハタ織りはしませんし、あなたとの関係もそこでスッパリ終わっちゃいますからね」

と結果をあらかじめ告げておけば、不利益を被ってまでのぞく人というのは少ないように思う。

また、禁煙に取り組む人が吸いたい衝動を抑えるには、

「禁煙して浮いた分のタバコ代を貯金したら〇〇が買える!」

ということを繰り返しイメージするのが一つの手段である。

このように、単に禁止するだけではなく、禁止の結果に利益・不利益を結びつけることによって理性的な判断を取り戻すわけだ。

感情に振り回されないにようにするには、まずは感情の仕組みを知るところから始めましょう、ということである。


□カリギュラ効果とは「禁止されるとかえってやってみたくなる心理現象」のこと
□心理的リアクタンス理論では主に3つの要素が関連するとされる
 ①その人にとっての、制限される行動の重要性
 ②制限される行動の総量
 ③行動を制限する「脅威」の程度
□カリギュラ効果に振り回されないためには「その行動をしたらどうなるのか」という結果に注目を向けることが重要

もっと深く知りたい!という方へ

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